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「もう、会わないから」

去り際に言ったハセヲの言葉の意味が判らなくて、僕は彼の次の言葉を待つしかなかった。

会わない。ってどういうこと?
会えない。んじゃなくて、会わないと彼は言った。

どうして?
どうして?

僕、何かした?
ハセヲが嫌がること、した?
嫌な事言った?

判らないよ。
だって、さっきまでは笑ってたのに。

「泣いても駄目だからな」

ぽたぽたと僕の頬を伝うのは、涙。
見透かしたように、背を向けたハセヲはそ吐き捨てた。
冷たい、まるで心の中まで突き刺す氷のような冷めた声色に、言いたいことがあるはずなのに、僕の唇は動く事はなくて。
空気は、声門を通り抜けることが出来ずに、ただの空気のまま唇から漏れるばかりで。

「じゃあな」

踏み出した足は軽やかで、ハセヲは少しずつ遠ざかっていく。
一度も振り返ることもなく。
少しも歩く速さも落とすことなく。
ただ、僕と彼の距離は離れていく。

ねぇ。
どうして駄目なの?
どうして何にも言ってくれないの?


じゃあな。
それはいつだってハセヲが去り際に言った台詞。
何も変わらなかった、また明日。と約束した昨日も。
もう会わないと言った今日も。
同じ言葉だったのに。

「ハセヲ・・・・・・判らないよ、ねぇ・・・・・・・ハセヲ」

闇に消えたハセヲを想いながらも、僕はまだ涙を流していた。

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