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「・・・・・・不条理だ」

コントローラーを握り締めたまま、亮は呟いた。
振り向いた薫の目に映ったモニターには真っ黒のバックグラウンドにエンドロールが流れ始めていた。
何処か納得のいかない表情の亮は投げ捨てる様にコントローラーを放り投げた。

「どうしたの?」

「いや、なんかさ・・・・・・」

薫に向き直った亮は少し口篭った。

「・・・このゲームの最後が、酷いなと思って、さ」

「そうなの?話題作みたいだけど・・・・・・良くなかったの?」

「そういう事じゃなくて・・・・・・ラストで主人公が死ぬんだよ。それまでも散々酷い目に合ってきて、でも頑張ってきて、でもその結末がこれかよ、って思ったら・・・・・・何か許せなくて・・・」

拗ねた口ぶりの亮の背後では、物悲しいエンディングが延々と流れていてた。
少し考えて、薫は
「でも、物語の終わった後はどうなってるかは判らないよ・・・・・・終わった後に、ボク達のように違う方向を歩んだかもしれない」
「・・・でもその主人公は、俺達とは違って、あの世界にしか存在しないんだ。どこまで行ってもその終わり方しかできないんだ、その先は紡がれてないんだ・・・・・・そんなの・・・」


「ないんだったら、亮が紡いであげればいいんじゃないかな・・・・・・」
「俺が・・・・・・?」
「亮だったら、きっと良い結末を紡げるよ。ボクも亮がいなければきっと、未来はなかったから・・・・・・」

「そう、だな・・・」
「亮なら、きっとできるよ・・・・・・」

優しく微笑む薫につられて、亮もまた少し笑った。

例え虚構であっても、構わない。
一時でも、心の安寧が訪れるなら、幸せだと笑ってくれるなら。
・・・生きていて良かったと思ってくれるのなら。

不条理だらけのこの世界に、幸せをの意義を、生きている意味を教えてくれた『彼』に、亮はそう願った。
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