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月光が雪色の肌を照らす。
その寝顔はとても安らかで。

頬に影を落とした睫も、まだ薔薇色を保つ唇も、いつも抱きしめてくれた腕も、全てが・・・・・・そこにあるのに。



心は、どこか遠くへ行ってしまった。

魂は、この体を離れてしまった。




どうして気付いてやれなかった。
いつだって傍に居て、誰よりも判っているつもりだったのに。

「なぁ・・・お前の言ってた同じ視線って、こういうことなのかよ」


膝の上で横たわるその細身の体は、もう動くことはない。
緋色を灯した眸は、もう開かれる事はない。

笑うことも、話を訊くことも、触れ合う事も・・・・・・・何もかもが、消えた。


「・・・・・・ずっと傍にいるんじゃなかったのかよ・・・っ」


AIDAに飲み込まれたまま、意識ごと深淵に落ちていった。
自ら暗闇に向かって行った。


『これが、ハセヲにしてあげられる唯一のことだから』

そう言い残して。



「今度は何、望んだんだよ。・・・・・・どうせ、また俺絡みだろ、馬鹿だよな」


ふわりと、風が舞う。


「俺は・・・・・・」


持ち主がいなくなった体は宙に舞い上がり、粒子と化す。


「例えお前が望んでいなくても」


さらさらと、流れるように消えていく。


「俺は、お前の傍から離れないのに」




全てがもう、遅かった。
本当は俺が依存していたんだ。
前に進もうとするお前を、妬んだ。


置いて行かれそうになってたのは、俺なのに。



「勘違いヤローが・・・・・・ばっかじゃねぇの」


一陣の風が通り過ぎた。
それは優しく、ハセヲの頬に落ちた涙をさらって消えた。
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