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「よ!ハセヲ」
カオスゲートに転送するなり、メールの相手が声をかけてきた。
「クーン」
相手、クーンは片手を上げて笑む。
「どした、お前が相談なんて珍しいな」
「うん、ちょっとな」



「で、話って?」
カナードの@HOME。
今は皆出払っているのか、ログインしていないのか俺達以外は誰いなかった。
ソファに座るなり、クーンが本題を持ち出してきた。
こういう時、こいつは頼りになる。
絶対茶化したりしないから。
これが大人っていうものなのか(一部例外はあるが)。

「あのさ・・・クーンって、したことある?」
「何を」
「いや、だから・・・・・・」
思わず口篭ってしまう。
いくら仲の良いクーンでも、そんなプライベート(というか寧ろプライバシーに近い)な事を聞くのは躊躇いがある。
その俺の反応にピンときたのか、急にクーンがにやにや笑い出した。
・・・嫌な予感がする。
「おおっ!そうか~。ハセヲもついにその気になったか!!」
「え?」
「うんうん!で、相手はいるのか?ん?」
「あ・・・いや、そうじゃくて、」
「ああ!アトリちゃんか!違う?じゃあ志乃ちゃん?それともタビーちゃん?まさかパイ?!」
急にいきいきとしたクーンは俺の話など全く聞かず一人で盛り上がっている。
「違うし、人の話は最後まで聞・・・」
「あ・・・!もしかして、相手いないとか。そうか!!だから相談してきたんだな。そういうことならまかせとけ!!美人から可愛い系まで好きなタイプを紹介してやるぞ!」

「違うって言ってるだろ!!」
思わず立ち上がって叫んだ俺にびっくりしたのか、クーンは体を仰け反らせていた。

・・・選択肢を間違ったのかもしれない。

勢いよくソファに座り込むと、我に返ったのかクーンも姿勢を正した。
「・・・お前、あっちの経験あるのかって聞いてんだけど」
「セックスだろ?この歳で未経験はちょっと痛いだろ」
「あるのか」
「あるよ」

「じゃあさ・・・」


ここで暫しの間があいた。
そもそもこいつに聞いてよかったのだろうか。
無類の女好きが男同士の事を知ってるとは思えない。
でも、悲しいかな相談できるのはこの男だけだ。


「男同士で、ヤッたこと、ある?」


そう訊ねた直後だった。
ドターンと激しい音をたてながら、クーンがソファから滑り落ちた。

「おい、クーン!!大丈夫か?!」

そう声を掛けるものの、当の本人は唖然とした表情のまま動きが止まっていた。
やっぱり、選択肢は間違っていたんだ。
呆けたクーンを見下ろしながら、俺は深く溜め息をついた。
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